少し前の話だが、京都で講演をさせてもらった。京都までの新幹線で、村上春樹の「東京奇譚集」(H17,新潮社)という文庫本を読んでいた。5つの短編から成る小説だ。「奇譚」というのはgoo辞書によると「珍しい話。不思議な物語」だそうだ。タイトルの通り、5つの短編はそれぞれちょっとした偶然とか、珍しいことをテーマに書かれている。その中のひとつ、「日々移動する腎臓のかたちをした石」を読み終えたあと、僕の身にもちょっと不思議なことが起こった。小説のあらすじはこんな感じだ。
「男が一生に出会う中で、本当に意味を持つ女は三人しかいない」 31歳の小説家・淳平は、知人のフレンチ・レストランの開店パーティーで、キリエという不思議な女性と出会う。「私の仕事はなんだと思う?」というキリエに、淳平は想像力を働かせたが、当てることはできなかった。淳平は新たな短編小説を書き始め、2人で小説の話をした。キリエはそれを喜んだ。淳平の小説が完成したとき、キリエは姿を消した。淳平は喪失感につつまれ、キリエが本当に意味のある女のうちの2人目であったのではないかと考える。淳平は小説は新聞広告に乗ることで、キリエが連絡してくるのではないかとおもったが、連絡はなかった。いくらか月日がたったあと、淳平は、乗っていたタクシーのラジオから流れるキリエの声を聞いた。ラジオの先でインタビューを受けているキリエは、窓ふき屋を営み、高層ビルで綱渡りをしていた。
"高い場所に出ると、そこにいるのはただ私と風だけです。他には何もありません”(キリエ、p177)
"風と彼女とのあいだには、誰も入ることができないのだと彼は悟った。そこで彼が感じたのは、激しい嫉妬の感情だった。でもいったい何に嫉妬をしているのだろう? 風に? いったい誰が風に嫉妬を覚えたりするのだろう?”(p177~178)
淳平の激しい嫉妬の矛先はどこなのだろうか。それは風でもなく、風とキリエとの孤高の関係でもない。ここには淳平の同じ表現者としての嫉妬がみえる。淳平は自分の短編小説が新聞広告に載ったことで、キリエが戻ってくるのではないかと期待していた。しかし、いつまで待ってもキリエからの連絡はなく、キリエが現れたのはラジオの先で、キリエは淳平の及ばない世界にいた。
淳平はキリエの職業を、「デザイナー」や「建築家」といった聡明で洒落たキリエにいかにも当てはまりそうなものだと推測していた。それまでに書かれてきたキリエという女性像はそれであり、ブランコ師という仕事は、淳平にとっても読者にとっても、想像の外にあったものではないだろうか。そしてキリエは、高層ビルの谷間で綱渡りをし、普通では共感が及ばないほどの気高い思想に生きていた。
「風と彼女とのあいだには、誰も入ることができないのだと彼は悟った」と三人称で書かれているが、これは淳平の嘘なのではないだろうか。これは淳平が、淳平と淳平の小説のあいだにキリエが帰ってくる程の作品を作ることができなかったことへの言い訳だったのだ。
淳平の激しい嫉妬とは、想像の及ばないところにいたキリエへの嫉妬と、キリエを自分の作品で嫉妬させられなかったことへの怒りなのだ。
淳平の激しい嫉妬とは、想像の及ばないところにいたキリエへの嫉妬と、キリエを自分の作品で嫉妬させられなかったことへの怒りなのだ。
と、いうような感想を持ったあたりで、新幹線が京都駅に止まった。新幹線から降りて、駅構内をオロオロしながらバスの発着所を探し、見つけて、バスが来るのを3分ぐらい待ってたところで音楽作家をしている友人からのメールに気付いた。
「高校時代の同級生で、めちゃ普通だった女の子が、ブランコで有名になってていて、ビビりました」
ブランコで有名ということが、ブランコ師としてなのか、体操的なブランコなのかよく分からなかったが、このタイミングで凄い偶然だと思った。これぞ、まさに奇譚じゃないか。スマートフォンを指でなぞり、メールに添えられたURLを押し、動画を見た。
画面には、「ブランコ」ではなく「フラメンコ」を踊っている女性が映っていた。メールをよく読み返すと、フラメンコとちゃんと書いてある。小説と混同して読み間違えていたのだ。ちなみに、ブランコ師という表現は小説内では使われておらず、窓ふきのアルバイトとしか表現されていない。本を読み進めているうちに、頭の中で窓ふきがブランコ師に変換され、その状態で友人からのフラメンコのメールを読み、間違え、驚いてしまったのだ。
画面には、「ブランコ」ではなく「フラメンコ」を踊っている女性が映っていた。メールをよく読み返すと、フラメンコとちゃんと書いてある。小説と混同して読み間違えていたのだ。ちなみに、ブランコ師という表現は小説内では使われておらず、窓ふきのアルバイトとしか表現されていない。本を読み進めているうちに、頭の中で窓ふきがブランコ師に変換され、その状態で友人からのフラメンコのメールを読み、間違え、驚いてしまったのだ。
その音楽作家の友人に電話をし、フラメンコ女性の同級生に嫉妬したかを聞いた。「そりゃちょっとは嫉妬しますねぇ」ということだった。僕は「やっぱそうだよね、俺もそう」と共感し、男ってどうしようもねぇなぁ。と、思ったのであった。
これ、読み間違いを抜きにしても、ちょっとは不思議じゃない?
ところでそんな音楽作家をしている友人と、また久々にセクシー登山部の新作動画を作ろうということになった。こんどは短編映画を予定している。きっちりとストーリーのある話を作るとなると、中学1年生のときにVHSカメラで撮った「ビッグフットvsターミネーター」以来になる。いろいろ忙しいが、楽しみだ。
なめたろう
・次の「ババ泣き」に向けて、前の「ババ泣き」を復習しましょう。
2013年セクシー登山部「ANIMALPLANET」
・以下、セクシー登山部や舐め太郎とは一切、関係ないですよ。ということを予め断ったうえで、友人で音楽作家の荒木氏が関わっているイベントの告知です。これまた、オシャンティーな動画です。
Published on 6 Apr 2015
個性派バンド・レミ街が住んでる街=名古屋と一緒に作る初の公共企画。
Video by 新美良太郎
『 the Dance we do 』
レミ街ファンタスティック・コンサート
2015年4月18日(土)中村文化小劇場
【出演】
レミ街
中村区の中学生コーラス隊
ダンススタジオAMS
チケット受付 16時15分
開場 16時30分/開演 17時00分(18時30分終了予定)
Video by 新美良太郎
『 the Dance we do 』
レミ街ファンタスティック・コンサート
2015年4月18日(土)中村文化小劇場
【出演】
レミ街
中村区の中学生コーラス隊
ダンススタジオAMS
チケット受付 16時15分
開場 16時30分/開演 17時00分(18時30分終了予定)
ビルの窓ガラスをロープで降下しながら作業する事をビル管理業界では「ブランコ」と呼びます。
返信削除それをやっている人は山男が多いと聞きます。
・・・自分もビル管理業界の人間で、以前の会社の上司の息子さんが山男らしいのですが、ブランコ作業はさせたくないと言ってましたね(^_^;)