2016年4月1日金曜日

外道クライマー

『外道クライマー』発売中。

http://honz.jp/articles/-/42617

角幡祐介氏の解説が全文読めます。

http://www.shueisha-int.co.jp/archives/3618

集英社インターナショナルの公式サイト


2016年3月21日月曜日

女子が三浦半島の突端を漂う

岳人の担当編集者である猪の毛皮に村上春樹膜をレイヤリングしている文学山男子こと服部文祥さんの「ツンドラ・サバイバル」(みすず書房)が第五回梅棹忠雄・山と探検文学賞を受賞した。服部さんがその賞金で太っ腹にも酒池肉林のパーティーを開き、それに僕を招いて下さるというので、浮くだろうなと思いながらも涎をダラダラと垂らして参加させて頂いた。ゴールデンピラー黒部横断をしている間、偶然にも仲間達と鹿肉の話で盛り上がり、無性に服部さんの鹿肉が食いたい欲求が盛り上がっていたので運命のタイミングだったのだ。大げさか。

――そのよくよく日、ポッと一日予定が空いてしまい、なんだかどうしようもなくムラムラと登山がしたい衝動が盛りあがり、いまや売れっ子大作家先生である角幡唯介に「明日、暇? 山に行かない?」と、電話をしてみた。
「難しい山は肘の手術したばっかだし、無理」
「登攀がない藪山だったらどう?」
「それも無理」
「じゃあハイキングならどうよ」
「ハイキング!? なにそれ、メンドクサイし。(笑)、飯だったら行くよ」
そりゃそうだ。電話を切ったあとに6秒間ぐらい悩み、そういえばと、服部パーティーで頂いた名刺の一番上のイラストレーターの神田さんに駄目元でコールしてみた。すると彼女は強い警戒心を抱きながらもこの直前の誘いに応じてくれた。軽く食事をした程度の間柄でしかないのに素晴らしい行動力だ。彼女はハイキングしかしたことが無いとのことだが、きっと藪ヤや沢ヤに向いているのではないか。








「・・・・・・」














2016年3月7日月曜日

黒部横断

厳冬期黒部横断
2016年2月3日~3月2日(31泊32日)
ギリギリボーイズ登山隊
伊藤仰二 / 佐藤裕介 / 宮城公博

大谷原~赤岩尾根~鹿島槍ヶ岳~牛首尾根~十字峡~黒部・剣沢大滝ゴールデンピラー登攀~黒部別山北尾根~真砂尾根~別山尾根~劔岳~早月尾根~馬場島~伊折

2008年に馬場部長と共に劔岳に入る許可申請の為に登山隊名を考え、居酒屋で適当に決めたのが「セクシー登山部」だった。その年、僕らと同様の理由で登山隊名を「ギリギリボーイズ」として申請し、黒部横断に挑戦したのが伊藤仰二・佐藤裕介・横山勝丘のトリオだ。僕らセクシー登山部は荒れ狂う劔岳になすすべなく逃げ出したが、ギリギリボーイズは黒部横断を命からがら、それこそギリギリの状態で成功させていた。のちに彼らの記録を見て大いにゾッとし、燃え上がる嫉妬心を抱いたものだ。
その9年後、彼らと共に僕が黒部に入るとは思ってもいなかった。それも32日間に及ぶ極めて異例な計画だ。しかも計画の目的は黒部剣沢大滝のゴールデンピラー登攀だという。ゴールデンピラーとは、伊藤・佐藤・岡田康らが大滝尾根登攀時に見た剣沢大滝右岸に厳つくいきりたつ急峻な岩壁のことで、カラコルム・スパンティークのリッジ「ゴールデンピラー」になぞって命名したものだ。2015年にこのトリオは25日の計画で黒部ゴールデンピラーを狙ったが、黒部の悪天候に25日計画では足らず、今年は32日間の計画で挑むことになった。伊藤が差し出した写真に写る剣沢大滝のゴールデンピラーは本物のゴールデンピラーに勝るとも劣らぬどころか本物以上にぶっ立っており、厳つく、強く、太く、力道山の朝立ちを連想させるほどに凄まじいプレッシャーを放っている。カラコルムのゴールデンピラーを第三登している佐藤裕介が「本物よりも難易度は高いだろう」と言う・・・・・・。

――いろいろあって、劔岳登頂目前の3月3日(黒部横断30日目)

立山稜線上でホワイトアウト。テントが引き裂かれそうな激しい烈風に3人でガタガタ震えながら耐えていたところ、伊藤がテントの端からチョコの破片を見つけた。
「このチョコ、ジャンケンで食う人決めよか?」
そう伊藤が提案してきたのだが、僕の内心は穏やかではなかった。なにせお腹と背中がくっつくように腹が減っていて、公平とか平等とか皆の為にといった「俺はチョコいらないから皆で食いなよ」的なキリスト的自己犠牲の精神はとうの昔に失っている。というか、そもそもが貧乏性のガメツイ性格なので、下界で満腹のときであっても「俺のチョコだ!」と叫んでいたと思う。だから、たとえ嫌われようが1カロリーでも摂取して自分の体温を上げて生きのびる為の活力にすべく、いつも通り欲望丸出しで伊藤に言った。
「ジャンケンで決めるだと? それは俺がさっき食ってたブラックサンダー(チョコ)の破片だ。俺のもんだろ!」
そう言って伊藤の手からチョコの破片を強引に奪い取った。(伊藤はチョコの破片に血走った目でいきりたつ俺に、素直に渡さないとぶん殴られると思ったらしい)
氷ついたチョコの破片は小指の爪先程の大きさしかないが、僕にとっては同重量のダイヤモンドと同価値に値するものだ。チョコの破片を落とさないように慎重に口元に運ぶと、舌先で丁寧に撫で回し、氷を溶かし、生娘の秘部を愛撫するように優しくゆっくりと奥歯で噛みしめた。ほんのりとした苦味の後に、嗅覚えのある特徴的なあの臭いが口中に広がり、それは次第に……。

「うげっ、ウンコじゃねーかこれ!」


タイのジャングルで毒の実を食ったことを思い出しながら小便用のタンクにペッペとウンコを吐き出した。3人ともガタガタと震え続け、今にも吹き飛ばされそうなテントで命の心配をする傍ら、伊藤・スター佐藤裕介からは「さすが46日のジャングルを生き延びたナメちゃん(宮城)は生に対する執着心が半端じゃないな、かなわないっす」と、「ウンコ舐め太郎」として小学生並のプリミティブなイジメを受けた。


「ちっくしょー! それにしても、俺たち大人になれないなぁ」
「そもそも、まともな大人はこんなとこ来ねーだろ」

いい仲間に恵まれ、楽しい人生を歩んでいることをウンコの苦みと共に噛みしめる。しかし、なんでテント内にウンコがあるのかは謎だ。




さて、話変わって宣伝になりますが、3月25日に集英社インターナショナルより集英社・開高健ノンフィクション賞の最終選考に選ばれた僕の処女作である「外道クライマー」が発売されます。登山や登攀の世界を知らない人にも読める内容になっているかと思い升。スター佐藤こと、佐藤裕介のエピソードも盛りだくさんですので、佐藤裕介ファンの人は買うべし。

アマゾン
http://www.amazon.co.jp/%E5%A4%96%E9%81%93%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%9E%E3%83%BC-%E5%AE%AE%E5%9F%8E-%E5%85%AC%E5%8D%9A/dp/4797673176

加えて、角川映画「神々の山嶺」(僕もちょっと出ている)に関連し、発売中の言論誌・集英社インターナショナル「kotoba」春号にて、神々の山嶺の原作者・夢枕獏氏と宮城の対談が載っています。こちらも宜しく。

さらに加えて、次号のエイ出版「ランドネ」で「神々の山嶺」の監督・平山秀行氏との対談記事が載るので、そちらも是非。

IN,スプリング!


ウンコ舐め太郎こと、宮城公博






左・スター佐藤、中・伊藤、右・宮城公博(舐め太郎)

鹿島槍への登り



十字峡を全裸渡渉する宮城のケツ



剣沢大滝I滝とピラー

劔岳山頂にて


2016年1月4日月曜日

海谷横断

「年末年始、海谷の旅」
和田一真、宮城公博(セクシー登山部)


 カサカサやヌチャヌチャの白い雪つぶてが重力に逆って下から上へ、あるいは右から左へと、中空へ吸い込まれるように濛々と舞い上がり、それが肉体にぶつかって砕けて飛んでは、一回転して眼球を刺しにくる。眉間に皺を寄せて薄目でそれを耐えるものの、イライラの針はずっとメーターを振り切っていて、敬虔なクリスチャンが聞いたら失神するような罵詈雑言を雪に吐き出し、ついでに絡んだ痰も掃き出し、ズルズルヌメヌメとナメクジのように這いずって進む。鉛色の空から烈々と降り注ぐ湿り雪は下着から陰部までびしょ濡れにし、踏み出すごとに足周りに推定5kgの雪団子のプレゼントをくれる。足先に重りを乗せたまま筋力トレーニングのような歩行運動を延々と気の遠くなるような時間繰り返し、脹脛と太腿の筋肉たちが魂が失われるような悲鳴をあげるものの、なんだか負けたような気になるので悲鳴から耳を塞いで休まず歩む。すっからかんの胃腸と脳が炭水化物・糖分を猛烈に求めているが、ポケットには飴玉がわずかに二つ。パートナーが「今日はここまでにして、テントはろうか?」と言ってくれるんじゃないかと脳みそが期待しているが、僕の口先は「今日はヘッドライドつけて夜中までラッセルを続けるか!」なんていうとんでもない単語を吐いている。そんなこんなしていると、雪煙が静止して視界がぶわーっと開け、白い藪尾根の先、いつも鈍色の糸魚川の街並が艷やかな灰色の建築物群と澄んだ青の海セットとなってまるでジブリ映画に出てきそうなハッピーなオーラを放ち、それがおっぱいのような山の谷間に慎ましく申し訳なさそうに挟まれていて、とてつもなく可愛く、そんな素敵な景色を眺めて幸せを感じると同時に、「俺たちこんな目にあってんのに、あそこでセックスしているカップルがいるんだな」と、つくづく今年もハッピーニューイヤー




全身を新品のモンベルのカッパで固め読図するナメ太郎。世界的に見ても極めて高い不快指数を誇る山域に居るにも関わらず、まるで核シェルターに引きこもっているかのごとく厳しい外界から身を守ってくれるモンベルのカッパ。モンベルの商品があまりに素晴らしすぎて、これでは登山者が山で自然の厳しさを体験する機会を奪っている! と、まぁ、冗談のようなヨイショはさておき、ぶっちゃけ、この手の雪山では何着ても濡れるし、藪でグサグサになるので、高価なパタゴニアのハードシェルより比較的安価な新品級のモンベルカッパあたりがベターなのは確か。あ、俺はその比較的安価なカッパを買う金もないので、心優しいモンベルさんに商品を提供して頂いて升。これはどちらかというと、アウトドア企業がクライマーの挑戦を応援というより、いち企業が橋の下の住人を支援するという感じでの提供。そんな感じでカッパを貰った。と、こんなこと書くとモンベル広報部に怒られそうだ。ちなみに、誤解されるといけないのですが、山岳誌に載っている海外遠征で成果を出している有名クライマー連中が、アウトドア企業から大金貰っていると思ったら大間違いで、優雅に泳ぐ白鳥が水面下で激しくバタ足しているように、大抵は細々と短期の肉体労働をして稼ぎ、それでクライミングに出かけているのです。その短期労働で食いつなぐというのもそれなりに大変で、個人事業主としてそこそこの自己管理能力が求められる。どれくらいの能力かというと中堅企業なら課長以上クラスの能力がないと厳しい、となんとなく推測。自分で稼がないのであればヒモとして生きるスケコマシ能力がいる。もしくは秒速で億を稼ぐに代表される教祖・詐欺師・マルチビジネス家としての才能を持ってして「夢を追って生きよう!」などと言った聞こえのいいメッセージを発し、企業講演をハシゴして食いつなぐスキル。クライマー魂に正直に生きようとすると、世の中、雪山のように冷たいのです。



ワカンを背負ってラッセルをする舐め太郎。我ながらワカンの背負い方がカッコイイと思っている。


湿度100パーセントの猛烈な湿雪でも焚火をするのが沢ヤということで、三島由紀夫と週刊プレイボーイとゴミをファイヤー。雪山でスコップは焚火の台座として役立つので覚えておきましょう。徹底的合理主義に基づく研ぎ澄ませた軽量化こそアルピニズム的な衝動と自制だ! などと言いつつ、山に本を持って行くことで文化系男子ぶるのがセクシー登山部として正しい姿勢。あれだ、グラビアでオナニーして、精液の軽量化と、蛋白源の摂取という永久機関論。


エビグラというナウい壁へロープを伸ばす、和田くん。
「宮城さんのこと、暴れキャラだとみんな誤解してるけど、ぶっちゃけ良識人ですよね。自分の狭い枠組みの中でしか物事を考えられない人にはただの怖い人に写るんでしょうが、過激なように見えて、やること言うこと筋通ってるし、先人達の築いてきたものを正当に受け継いでいるだけじゃないですか。それを踏まえた上でね、モテに関したこというと、宮城さんは本当のことを言うからモテないんですよ。嘘ついてでも相手に話合わせないとダメ。でも、そういうのできないんですよね? 合理的・建設的な話が通じない人と仲良くできないでしょ? 俺もできないんですよ。だから今後もモテないですよ、お互いに」と、モテ論を展開する和田くん。


 
ラッセル中の和田くん。ずっとラッセルで、そして藪もラッセル。そして藪ズボ。



黒部横断の白眉が黒部川の渡渉なら、海谷では海川となる。


バットレスと言えば北岳! ではない。バットレスと言えば、もちろん日本のバルトロ氷河こと海谷の海老グラバットレス。山岳史試験に出るので覚えましょう。



鉛色の空の下、鉢山山頂から阿弥陀&烏帽子を睨む舐め太郎。岳人の魂ことアックスは、雪崩にぶっとばされたときに無くしたり、あるいは貧乏なのでその場の勢いで売りさばき、今回は借り物。そんな借り物の魂だが、そこにもホンモノの魂は宿る!!


日本のバルトロ氷河こと海谷。扇のように白い翼を広げる粗悪な岩くずの集合体である鋸山は、カラコルムの白眉ことチャラクサ氷河のK6を思い出させる。ここをバルトロ氷河と命名した先人のセンスは素晴らしい。本気なのか、俺たちのように自虐ナンセンスを込めているのか……。


ゴール



2015年12月15日火曜日

素敵女子たちの閉経した子宮と魂に響く名言集

舐め太郎の周りにいる素敵女子に、女子の秘密を聞いてきました。舐め太郎は酒の飲みすぎで常時記憶がまばらなので、女子たちが何を話してたかすでに曖昧ですが、確かこんな素敵な名言が飛び出しました!



ベッキーさん(36)三好市在住の1歳のお子様をもつ主婦。主婦業の傍らボルダリングやヨガも嗜む素敵女子。この写真をセレクトしたのは舐め太郎の悪意ではなく、こんな無防備状態でさえ、雲を携え天を突かんばかりに伸びあがる世界最大の氷壁ナンガ・パルパットのルパール壁のように美しいベッキーさんをご紹介したかったのです!


「最近の女子活動? そら子育てよ。子育てには日本最後の地理的空白部・称名廊下(立山の渓谷)のような美があるわ。それは優れた工業製品や日本刀と同様の美、機能美よ。幾千万のときをかけた水の浸食により、その身を研ぎ澄ませ続けた称名廊下は渓谷として完璧なまでに尖り切り、一切の生命を寄せ付けず、自然として完璧かつ強大よ。これは自然が生み出した機能美なの。「判断力批判」でカントがそのことに気付けなかったのは仕方ないわね。なぜならカントは哲学者であって、沢ヤじゃない。そして女でもないわ。私は女として女になり、女を超える存在になりたい。それだけのことよ」




ズンコさん(36)一宮市在住の0歳のお子様をもつ主婦。手織りアトリエ・ペシュカで創作活動を行っている素敵女子。ズンコさん著作の「カード織りのテキスタイル・ストラップづくり」 (学研)は手織り女子のバイブルらしいですよ。上下スウェットのズンコさんのこの写真をセレクトしたのは、舐め太郎の悪意ではなく、無防備状態でも3000メートルの雪の要塞・カラコルムの白眉・K6北西壁のようにオシャレ可愛いズンコさんをご紹介したかったのです。


「そうね、創作物も女の美も一緒かもね。だいたい機能美で説明できるわ。本当にいい女ってのは、内面・中身も伴い、それがファッションも含め外見にまで発揮され、美しくなるのよ。だから見た目だけが可愛い女ってのは、本当は可愛くないの。可愛いを装っている模造品。精巧なコピー品よね。私は幾度となく生と死の境界線にたってきたことで、女の本質を見抜けるようになったわ。三島由紀夫は武士道に憧れていたようだけど、武士の本質には辿り着けなかったわよね。何故なら彼は優れた小説家ではあっても、侍でも山ヤでも女でもないからよ。そして一度や二度の死線ぐらいじゃダメなの。幾度も繰り返し死線を乗り越えることでしか辿り着けない境地があるのよ。もちろん私はそこに辿り着いた数少ない女であると自覚していて、歴史に名が残るでしょうね。でも勘違いしないでね、地位や名声なんかに興味はないの。私はただ、女として正しく生き続けるだけ



多田さん(20)名古屋のアウトドアショップで働く一宮市在住の素敵女子。登山が大好きだそうです。忘年会なのにテーピングをして自己アピールに必死な沢ヤなど目に入らないほどの女子力の多田さん。その圧倒的な女子パワーは、鋭く、太く、デカく、ゴツく、強く、カッコよく、勃起した力道山の陰茎を彷彿とさせる台湾の大岩峰「針山」のような破壊力があります。そんなパワーを自然体の状態で悪絶に発し続ける多田さんは、見るものを釘づけどこか、敬虔なクリスチャンが見たら失神するような拷問器具で張り付けの刑にします。ホンモノは違いますね。


「隣の男? 彼氏なわけないじゃない。ただのペットみたいなもんよ。何故山に登るのかって? マロリーは、『そこに山があるからだ』と言ってたわね。小説「神々の山嶺」の主人公・羽生丈二は『ここに俺がいるからだ。山ヤは山ヤだから山に登る。だから山ヤの羽生丈二は山に登るんだ』なんて言ってたかしら。私はマロリーとも羽生とも違うわ。人類にとってのパイオニアワークを成し遂げ続けることで超人・魂の女となるの。確かニーチェもそんなことを言ってたわね。あの男は女子力が足りないから、それを成し遂げられなかったけど、私は違うわ。山で身に着けた悪絶な面魂をソ連が開発した世界最大の核爆弾ツァーリ・ボンバのように破裂させて男を口説き、ヒモになるのよ。ヒモになることで安定した資金を手に入れ、また山に行くの。そこでまた魂の震える登山をして男を釘付けにし、ヒモを強靭な鋼鉄のワイヤーの鞭にしていくの。その鋼鉄の鞭で世界中の男を征服して、私は世界の女王となるの。女として生まれた以上、当たり前の生き方よ」

2015年11月18日水曜日

モンベル冒険塾




風邪をひいてすこぶる体調が悪かったが、パソコンを開いてANITUBEでワンパンマンを見ながら、晩酌し、痛飲した。そして気絶するように眠った。これは十年以上続けてきた日課だ。おかげで、死神に鎌で背中を裂かれ魂が凍りつくような悪夢を見て、その悪夢に叩き起こされたが、これも日課なので慣れている。いつもであれば、そのまま布団の中で夢と現実を行き来しながら3~4時間過ごすのだが、この日は仕事なので布団から這い出た。シャワーを浴びて、くたびれ色あせ穴の空いたライペンのザックを押し入れから取りし、そこに二日間かけて作った1万5千字の台本とノートパソコンを詰め込んだ。それを背負い、最寄りのJR駅に向かった。この日はモンベル本社に冒険塾の講師として呼ばれていたのだ。
駅の窓口で、乗り換えに余裕がある発車時刻の新幹線の切符を買い、電車にゆらゆらと揺られ……、うっ、ゲロが喉元まで這い上がり、ぐっとこらえてそれを飲み込んだ。目の前にいた女の子がすっと離れていく。俺が吐く息には、揮発したアルコールが混じっていた。
名古屋駅につくと東京方面の新幹線のホームへと歩いた。名古屋駅の新幹線のホームではいつもきしめんを食べている。だから乗り換えの時間には余裕を持たせているのだ。いつものように立ち食いきしめん屋の自動販売機の前にたった。しばし悩んだが、さすがに気分が悪すぎたので食うのをやめることにした。ペットボトルの水をガブガブと飲み、缶コーヒーを買って飲んだ。
切符を見て14号車が停車する場所まで歩いた。ベンチに座ってザックから台本を取り出し、それを見直しながら新幹線が来るのを待った。そろそろかな? と思い電光掲示板を見ると、「東京行き」とある。違和感を感じ、切符をもう一度見てみると「新大阪」……。
俺は大阪方面ホームへと、団体客を振り切りかき分けながら全力疾走をした。そしてギリギリ間に合った。油の汗が、背中と脇に膨大な量で染み出ていた。のぞみに乗れば新横浜まで止まらない。危うく俺は、モンベルの辰野会長に2時間尺を延ばして喋ってもらうか、グレートジャーニーの関野吉晴氏に早入りしてもらうか、新横浜のネットカフェの個室からスカイプで講演をするというウルトラCをやらなければならないところだった。危ない。
 会場のモンベル本社につくと、広報部のオフィスで写真を見直しながら、小声で台本を読み直した。時間がくる――

「続いての講師、宮城公博さんをご紹介します……」

壇上にたつ俺の横には、青い顔をしたモンベル広報部のスタッフが三人、慌ただしくパソコンをなぶっている。俺が持ってきUSBメモリーが、モンベルのセキュリティーに弾かれ読み込めなかったからだ。さらに、俺のパソコンと会場に用意されたプロジェクターを繋ぐケーブルもない……。写真と動画ありきのスライドショーを考えていたのだ。台本だって写真に合わせて作ってきている。このまま写真が見せられないとなると、俺はこれからの1時間を「お喋り」のみで乗り切らねばならない。
絶体絶命のピンチに陥っていた。この日の為に貴重な休日を裂いてくれたお客さんの視線がドスドスと突き刺ささる。俺は全身を縛られ樽の中に閉じ込められた後ひと刺しで昇天する黒ひげ危機一髪になっていた。助けを求めて司会の女の子の方を見ると、女の子は冷徹な視線を私に向けていて、それはトドメとばかりに俺の心臓に突き刺さった。
そのとき、風邪と二日酔で朝霧の靄がかかっていた俺の脳内が、完璧な白、「無」になった……、それからのことは、記憶にない。
幼少期に虐待を受けた子供が、トラウマから立ち直るために自らの記憶を消去するように、俺の脳も、俺が明日からも前向きに生きて行けるように、あの凄まじい辱め、公開凌辱の記憶を消したのだ。
記憶はないが、おそらく俺はあの会場で、お客さん全員からの冷ややかな視線をうけ、失笑を買ったのだろう。司会の女子からは「ちっ、せっかくチャンスやって呼んでやったのによぉ、台無しにしやがって」という、背中が凍り付くような視線による暴行をうけたのだ。視線で暴力を振るう彼女のその眼光の悪絶さは、まるで称名廊下の水のように私の体力と体温を奪い……。

と、いうほどまでは俺の頭は真っ白になっていなかったが、ひどくショックをうけ、記憶が曖昧なのは本当である。何を喋っていたのか俺が分からないのだから、お客さんはもっと分からない。そして、司会をやっていた女の子は「ちっ」とかは言わない、いい人だ。

と、いうわけで、「何があるか分からない、こういうことがあるのが冒険」という、中学生が考えたようなプリミティブなオチ。皆さま、勘弁して下さい。

そして夜、広報部と痛飲し、ネットカフェで寝た。悪夢? 見たよ。


モンベル冒険塾講師 宮城公博

2015年10月22日木曜日

風俗日記

10月21日(水)の日記
下ネタなんですが、けっこういい話だと思うんだけど。


8時・起床、二日酔で気持ち悪い。水飲んでごろごろする。 
10時・スーパー銭湯にいく。平日の銭湯は老人たちのサロン。俺だけ若い。でもサウナ我慢比べで爺たちに負ける。 
12時・湯船で血行が良くなったのか、股間がムラムラしてきたので、スマホでチェックして駅前の風俗(ピンサロ)にいくが、待ち時間が長く、他の店にオンサイトでぶらりと入る。 
13時・テキトーに入った店だが、パネルで可愛い子を見つけ、当たりだ!と思って、喜び震えてニヤつきそうになるのを我慢して、「じゃあこの子で」と、クールに指名。歯を磨き、うがいをして、爪を切り、入念に爪をとぐ。

5分後、マシュマロ系というか、ビアダル系女子が出てくる。がっかりする。なぜ、さっきの店で1時間待てなかったんだ、このバカ野郎!と、心の中で愚息に罵詈雑言を吐く。ブーデーとはいえ、快活で人当たりのいい子だけに、この子には悪いが、ちょっとイケないかもなぁ、と思うと、しんみり。

10分後、射精。不覚にも、愚息を拭いてもらうときにはフル勃起しており、なおかつサービス精神旺盛な嬢で、凄く気持ちよく、いつも以上に速射であった。 

3分後、お茶しながらピロートークタイム、このマシュマロ女子、ヌかれる前からよく喋る女だなぁと思っていたが、話の内容がむちゃくちゃ面白くて、これは可愛いだけの子より、はるかに引くのが難しい大当たりであると、反省した。近隣の店のガサ入れ裏話、性に対する探究話など、内容もディープでくっそ面白かった。

 嬢「気持ちよかった?それにしても、すっごい、いいサイズでしゃぶりやすいチンコでした」 
俺「なにそれ?生まれて初めてそんなん言われましたわ、ていうか、そういうのあるのね」 
嬢「ありますよぉ、なんというかサイズ感が私の口にぴったりでやりやすかったです」 
俺「ヌキ屋ならではの斬新な表現で、そのセリフ感動です」
嬢「舐め太郎さんって、どんな性癖があるの?」
俺「いたってノーマルだとは思うんだけどなぁ」
嬢「私もそう。でもね、追及したいのよ、性に対して、そういうのない?」
俺「まぁ、あるっちゃある。前立腺マッサージとか、そんなに気持ちいいのなら、人間としてせっかく生まれたんだから、やっておかなきゃってのは思う。なかなか思い切れなくて先延ばしにしてきたけど」
嬢「せっかくだから、気持ちいいことって追及した方が、人生ぜったいにいいと思うの。このお店は前立腺マッサージしてないし、ここでやっていいのかわかんないけど、私、お客さんに言ってるのよ。ローションとかちゃんともってきてくれたら、やってあげるって。それが合う合わないは人によると思う。でも、知らない世界を経験することって大事でしょ?人生ってそれがどれだけあるかじゃないかしら」
俺「あぁ、僕もそう思う。性的なことだけじゃなくて、あらゆる面でね」

……。

俺「最近、風俗って行ってなかったんだけどさ、久々に来ていいなぁって思ったよ。お姉さんの話、すごく面白いし。特にこの手のピンサロって味があっていいよ。デリヘルより僕は店舗型の風俗の方が好きなんだよね。店舗の方がなんか、街で遊んでるって感じがあるでしょう。でも最近は店舗型の風俗って減ってるよね。10年前と比べるとさ、最近は栄や錦もすごく寂しくなってるよ。デリヘルブームと不景気、行政の浄化作戦とかで、今や歌舞伎町ですらサッパリしちゃってるしね。でもここらの風俗とか街並みって、俺が高校のころから変わってなくて好きだな。地方じゃ、こんなとこもう珍しいよ」 
嬢「そうなんです!風俗って日常から一歩離れたとこにあるべきで、お客さんに非日常を提供しなきゃいけないと思うの。デリヘルだとホテルだから、非日常感が少ないよね。家から電話して予約して、車でインター近くのホテル行って……。それって効率的だけど、ちょっとドライで薄まった行為だと思うの。雰囲気もね、同じヌキでも違うの。例えば、同じものを買うにしても、昔ながらの商店街で買い物するのと、郊外のイオンで買い物すること、あるいはアマゾンでポチっとでじゃずいぶんと差があるでしょう。だからね、私は昔ながらの店舗が好き。日常の街から扉一枚隔てて別世界があるでしょ」 
俺「わびさびの世界やなぁ。俺もまったくの同意見。呼び込みやボーイさんもいろんな人がいて、楽しいし。待合室で他のお客さんと一緒になるのもなんか、いいしな。常連にならなければ、もう一生会わないんだろうけど、お客さんもその瞬間だけの同志なんだよ。親ぐらいの年の人や、普段はエリートサラリーマンだったりする人が、同じ目的で隣に座ってドキドキしながら待つ。プレイに入れば壁を隔ててエロいことをしている。絶対に普段は関わらないような人種が、そのときだけは同志なんだよね。ちょっと気恥ずかしい感じがあるけど、それも味わいでさ……」


やはり、クライミングと風俗というものは、非日常感という部分でつながるのだと、嬢の話を聞いて再認識。対面したときはがっかりしてたのに、帰るころには、また指名したいどころか、この子と付き合えたら人生楽しくなりそうだなぁと思っており、完全にやられてしまっている。すばらしいヌキ屋だった。

14時 駅前の海鮮カフェでランチ 
15時 ボルダージムで、スタッフといかにして女子客を増やすかバカ男子会議→俺がジムTシャツを作り、さりげなくアピールするという話になる。(強引にアホ話に付き合ってもらっただけだけど)
18時 さっそくヤマダ電機でプリントTシャツ用紙購入
19時 お絵かきして、プリント。 
20時 ジムに戻って、シャツお披露目する。俺は人前でうんこするのもオナニーするのにもなんの羞恥心も感じないが(人前でオナニーしたことないけど)、これは恥ずかしかった。 (なんのプレイだよ、あと、ここ(セクシーブログ)でホームジム公開するのは営業妨害ではないかと思えてきたけど、まぁ、いっか。たのむ、出禁にしないでくれ!)
21時 スーパーで買い物 
なう 鍋食いながら晩酌して、つらつら 



書いてるときは脳が熱暴走していてイケてると思ってたけど、いざTシャツに貼り付けると、むちゃくちゃダサいし恥ずかしくて後悔した試作Tシャツ用イラスト。イラスト女子は世界の野口のあきよちゃんのムーヴトレース。さすがにこれでTシャツは無いな、と、思った。(マゾのオナニーや)。あと、どうでもいいがクライミング”好”ジムではなく、クライミング”女子”ジムです。そもそも女子専用のジムじゃないんだけどw




貧乏なので金銭的に明日も風俗探索ってわけにはいかないけど、たぶん明日も似たようなゆるい1日を送る。
無職さいこー!!働いてる人、ざまーみろ!!(原稿締め切りが恐怖で現実逃避している)


知、いろいろ

今月からエイ出版ランドネで、女子向けエッセイ連載。

あこがれ続けた念願のアウトドア女子雑誌掲載なのに、いきなり風俗ネタと合わせて告知してるし、なんて天邪鬼なんだろう、俺は。30過ぎてもいい子になれないですねぇ。以前、某有名アルパインクライマーS藤U介氏に「舐めちゃん、もう30過ぎてたの!?落ち着かねぇ30代だなぁ」と言われたけど、まぁ、僕はそうとう頭を強打しないかぎり、落ち着くのは無理だろうなぁ。あ、S藤U助って、佐藤裕介な。
ランドネもせっかくチャンス頂いたので、速効の連載打ち切りにならないように頑張らねば。基本的にはサブカル&女子話です。第一回はジャージ女子と、ジャージの機能性の良さについて書いたのだけど、よくよく考えるとこれってメーカーも敵に回すなぁ。わはは。そら山ではきちんとしたアウトドアブランドの服の方がいいに決まってんだけど、貧乏人には安物系も大事なのよね。オシャレ的な観点で言っても、ハイキングやボルダー程度なら街ブランド混ぜた方が幅でるし、すっげー可愛い子がワークマンの服着てたら、萌えるでしょう。(俺だけ?)
まぁ、スキーヤークライマーの故・新井裕己が山と渓谷社・ロクスノで連載していたハードコア人体実験みたいなもんということで。ま、僕には東大行ってた新井氏のような知識も知性もないが。なにせ最終学歴、工業高校卒ですから。ちなみに僕はいつもインナーは割とメーカーのいいの着てて、外はジャージとか、寝間着みたいスウェットとか、ボロボロの作業着です。自分で言うのもなんだが、たぶん、僕ってクライマーとしては日本でトップクラスに藪漕いでると思うんだけど、この手の登山って一瞬でアウターがズタボロになります。だからアウターはワークマンの作業着とか、買い取り王国とかBOCK・OFFの中古化繊服になっちゃうのよね。あ、でも、僕、高校生のときはDCモードってて、原宿オシャンティー世界代表のスマート編集部発行のFRUiTSにスナップされて1Pデカデカ乗ったことがあるねんで、これ、自慢ね。

1025日 名古屋IBS石井スポーツで四角友里、YURI'S Market(告知とかいって、参加はお客としてです。アウトドア女子のカリスマ四角さんにとって、こんなイメージダウンになる告知もないなぁ。ごめんね)

1031111日、三重県いなべ市青川峡キャンピングパーク、ランドネ山大学。さっきイベントの存在を知って、近場だし俺も行っていいですか?と、おされ女子編集者のY女史にダメ元で聞いたら、奇跡的にOKもらえた。なんと、天女のような優しさ、目から鱗だ。現場では基本的には黒子に徹し、スタッフやお客様の荷物持ち・靴磨きでもしようかと。イベントに参加されるかたは、手元・奴隷のようにお使い下さい。(これもアウトドア女子最高峰ランドネ&いなべ市のイメージダウンだなぁ、僕としてはオサレ女子とたき火できるだけで、人生の本懐なんだけど、これに比べたら称名廊下の完全遡行とか、小さなもんだ!大西さん、ごめん)

1114日モンベル大阪会場で2015モンベル冒険塾・講師

ゴルジュと冒険論を話す予定ですが、僕は完全に箸休めのネタキャラ。他の講師陣がおべんちゃらではなく本当に豪華。
(モンベル辰野会長、グレートジャーニー・関野良晴氏、紛争解決請負人・伊勢崎賢治氏)



では!